知らず知らずのうちに二重派遣!?禁止理由や罰則と偽装請負についても解説!

知らず知らずのうちに二重派遣!?禁止理由や罰則と偽装請負についても解説!

先日、労働者派遣法において「知らず知らずのうちに、違反行為をしてしまう恐れがある7つの事柄」について紹介しました。
 

今回は、違法派遣シリーズ第1弾として、その中の【 二重派遣 】について、押さえておきたい基本知識や禁止理由、罰則などを詳しく解説したいと思います。
 

二重派遣とは、派遣会社から派遣労働者を受け入れた企業が、別の企業に対して、その派遣労働者を送り込む行為のことを言います。
 

業務形態の複雑化が進む中、知らないうちに二重派遣が行われてしまうケースもありますので、そのような違反行為に巻き込まれることがないように十分注意しなければなりません。
 

また、二重派遣には厳しい罰則規定もあり、コンプライアンス的にも派遣先企業として「知らなかった」「気づかなかった」では済まされません。
 

知らず知らずのうちに二重派遣にならないようにするためにも、本記事で紹介する内容をぜひ参考にしてみてください。

 

▶関連記事|知らず知らずのうちに派遣法に違反!?実はそれって違法派遣「7選」

 

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二重派遣(多重派遣)とは?

労働派遣の仕組みは、派遣契約に基づき「労働者と派遣元(派遣会社)で雇用関係を締結し、派遣先企業の指揮命令の下で労働する」というものです。

 

一方で、派遣先企業が、自社と雇用関係がない派遣労働者を別企業へ労働力として供給し、関係会社や取引先企業の指揮命令の下で就業させている状況を、「二重派遣」と呼びます

具体的には、次のようなケースが二重派遣に該当します。

 

<自社の取引先企業で就業させる>

派遣先企業が自社の取引先企業に派遣労働者を派遣し、業務に就かせた場合は二重派遣に該当します

 

雇用契約も派遣契約もない取引先企業から指示を受けて業務に従事するためです。 

 

一方で、派遣先企業が取引先企業の業務を受託している場合、仮に取引先企業の建物内で業務を行っていても、指揮命令者が派遣先企業の社員であれば問題ありません。

 

<自社の関係会社で就業させる>

急な人手不足による一時的な対応などを理由に、自社で契約している派遣労働者を、自社の関係会社(子会社やグループ会社)で業務に就かせることも二重派遣に該当する可能性が高くなります

 

指揮命令者はあくまでも労働者派遣契約をしている派遣先企業の社員であり、関係会社の社員ではありません。 

 

もし、上記のような一時的に自社の関係会社に、派遣労働者を就業させる場合は、指揮命令者を自社の従業員に限定し、その旨を明記した労働者派遣契約を改めて締結しなければなりません。

 

偽装請負とは?

まず、「請負」について説明します。

 

「請負」とは、労働の結果としての仕事の完成を目的とするもの(民法第632条)です。

 

注文者、請負事業者、労働者の関係があり、派遣との違いは、「注文者」と「請負事業者の労働者」との間に指揮命令関係が生じないという点にあります。

 

一方で、注文者から請負事業者の労働者に対し、直接指揮命令を行った場合、労働者派遣契約を締結していなくても、実態として「労働者派遣」に該当します。

 

このように、契約上は請負としてはいるが、実態は「労働者派遣」というものを「偽装請負」と呼び、「二重派遣」の隠れ蓑として行われるケースが実在します。
 

(参考:厚生労働省|あなたの使用者はだれですか?偽装請負ってナニ?

 

 

※下記の図は、実際に二重派遣の隠れ蓑として「偽装請負」を行った場合の関係図です。

派遣先A社が、自社と雇用関係がない労働者(派遣労働者)を、取引先B社に労働力として供給し、取引先B社の指揮命令の下で就業させている状況を説明しています。
 

このような「二重派遣」や「偽装請負」は、法令違反となります。


意図的に行われる場合もあれば、意図せず発生している場合もあるので注意が必要です。

 

二重派遣が法律で禁止されている理由

二重派遣が違法であり、禁止されている理由は、「派遣労働者の保護」のもと、主に以下の2つがあげられます。

 

 ①派遣労働者の雇用に対する責任の所在が曖昧になる

 ②派遣労働者が不利益を被る可能性がある

 

それぞれ解説します。

 

①派遣労働者の雇用に対する責任の所在が曖昧になる

二重派遣は、派遣労働者が、「派遣先企業」ではない人物から指揮命令され、業務をすることになります。

 

そのため、賃金支払いや労災などのトラブルが生じた場合に、派遣労働者の雇用責任がどの企業にあるのか不明確になり、「労働者の雇用を維持する」「適正な賃金を支払う」といった責任を、関係する会社間で押し付け合う状況になりかねません

 

また、二重派遣先の企業が派遣労働者を不当解雇しても責任を問われないことがあるため、二重派遣では不当解雇や契約解除など、いわゆる「派遣切り」が起きやすくなってしまいます。

 

このように、派遣労働者の雇用が保護されないという問題が生じることのないよう、二重派遣が禁止とされているのです。

 

②派遣労働者が不利益を被る可能性がある

二重派遣の場合、派遣労働者の本来の希望とは異なる環境に再派遣されてしまうことも考えられます。

 

そうなると、企業に労働条件や仕事内容の変更を強要されたりするケースもあり得るのです

 

派遣労働者の目線で考えた時に、派遣先Aでの就業条件が、

 

「9:00~17:00/検品・梱包作業」であるにも関わらず、

 

再派遣され別企業で就業すると、「9:00〜18:00/事務作業」など、

 

勝手に勤務時間を変更したり、契約書にはない業務内容になっている、といったことです。


また、本来であれば、同一労働同一賃金の導入で、派遣労働者の最低賃金は労働者派遣法(第三十条の三~五)で取り決められていますが、意図的に二重派遣を行っている派遣先企業であれば、その法令を守らずに、仲介手数料を不当に搾取し、派遣労働者の賃金が少なくなる可能性があります

 

これらの観点から、派遣労働者が不当な扱いを受けることのないよう保護するために、二重派遣は禁止とされています。

 

二重派遣はなぜ起こるのか?

二重派遣が、なぜ起こるのか、その理由は主に4つあります。

 

■知識不足

派遣元から、すでに派遣労働者を受け入れている派遣先企業や、その派遣先企業から当該派遣労働者を受け入れる別企業(関連会社)が、「二重派遣」「偽装請負」の内容を把握していない場合、知らず知らずのうちに「二重派遣」「偽装請負」となっているケースがあります。

 

■人手不足

自社に派遣されている派遣労働者を、人手不足で困っている関連会社や懇意にしている取引先に、親切心で応援に行かせた時に、その派遣労働者に対し指揮命令を行う者が関連会社や取引先の従業員だった場合、これは二重派遣に該当します。

 

■取引先との力関係

上位関係の取引先から労働者の派遣を依頼された場合、断ってしまうと今後の取引に影響が出てしまうのではと考え、違法行為と分かっている場合でも、二重派遣を行ってしまうケースもあります。

 

■派遣会社の管理不足

派遣元が、派遣労働者や派遣先企業の担当者とのコミュニケーションが不足していたり、法令や派遣運用についての情報提供が十分にできていない場合、二重派遣を未然に防ぐことができません。
さらに、二重派遣が常態化している事実にすら気付かない可能性があります。

▶関連記事|【採用担当向け】人材派遣会社を上手に選ぶための比較ポイント5つ

 

二重派遣を行なった場合の罰則

二重派遣を行なった場合、以下の2つの法律に抵触する違法行為であり、罰則規定が科されることになります。

 

 ●職業安定法

 ●労働基準法

 

それぞれ解説します。

 

<職業安定法の罰則>

二重派遣は、職業安定法第44条で禁止されている労働者供給事業にあたる行為です。

 

【第44条】

何人も、次条(第45条)に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない

 

二重派遣はこの労働者供給事業行為に該当し、厚生労働大臣の許認可なく労働者供給行為を行ったとみなされ、職業安定法違反で「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(職業安定法第64条第9号)が科せられます。

 

こちらは、二重派遣をした企業と受け入れた企業の双方が罰則の対象となります。

 

ただし、二重派遣を受け入れた企業が、二重派遣であることを知らずに受け入れていた場合には罰則の対象にはなりません。

 

<労働基準法の罰則>

二重派遣は、労働基準法第6条で規定されている中間搾取の排除にも該当します。

 

【第六条】

何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない

 

この罰則は、企業と労働者の間を取り持つことでマージンを搾取することを禁じたものです。

 

派遣先企業と派遣労働者には雇用関係がないため、派遣先が他の企業に派遣労働者を派遣し、手数料を得た場合には「1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」(労働基準法118条)が科せられます。

 

こちらは、派遣労働者を二重派遣した企業のみが罰則の対象となります。

 

さらに、二重派遣を意図的に続けており、厚生労働大臣による改善命令等にも従わない場合は、企業名を公表される可能性もあり、企業イメージに大きく関わってきます。(職業安定法第48条3項)

 

二重派遣に「該当する・しない」を見分けるポイント

二重派遣に「該当する・しない」を見分けるポイントは、「誰が派遣労働者に指揮命令をしているか」です。

 

派遣労働者が正当に業務を行うために重要なのは、「派遣先企業の人物」と派遣労働者の間に指揮命令関係があることであり、「二重派遣先の人物」が指揮命令をしている場合は、違法にあたります

 

しかし、本来の派遣先企業ではない第三の企業のもとで派遣労働者が業務を行っていても、二重派遣にならないケースがあります。

 

例えば、「請負」「委任(準委任)」「出向」などがそれに該当し、指揮命令をする人物が派遣先企業の人物であれば、別企業内での就労だとしても二重派遣にはなりません。

 

二重派遣を防ぐためには?

「二重派遣はなぜ起こるのか?」のセクションで解説した通り、知識不足が故に「知らず知らず二重派遣」になっているケースがあります。
 

知らず知らずのうちに二重派遣に該当する派遣労働者を受け入れていた場合は、罰則があるわけではありませんが、業務遂行に支障をきたす可能性があるので、巻き込まれないようにすることが得策です。

 

 ●雇用関係がある会社はどこかを確認する

 ●指揮命令関係がどこかを明確にする

 ●契約内容や勤務実態の把握

 ●派遣労働者とのコミュニケーション

 

以上の行動を取ることで、二重派遣に該当する労働者を受け入れ前に発見できたり、受け入れ後でも早期発見することが可能です。

 

次に、「知らず知らずのうちに二重派遣を行ってしまう」ことを防止するには、どういったことに気を付ければ良いのでしょうか。

それは、「二重派遣に関する禁止事項や注意点を理解する」ことが重要です。

その上で、具体的な対策として、
 

 ●自社で受け入れている派遣労働者を請負先や関連会社で就業させない

 ●受け入れている派遣労働者を就業させなければならない場合は、指揮命令は必ず自社の従業員が行う

 

この二つの項目を徹底すれば、「知らず知らずの内に二重派遣を行う」ということはありません。
 

以上のように、二重派遣を防止(巻き込まれない・行わない)し、適切な労働者派遣の運用を心がけましょう。
 

 

まとめ:二重派遣は違法!正しく理解し、適切な派遣の運用を!

改めて本記事をまとめます。

 

二重派遣が禁止されている理由は、主に以下の2つがあげられます。

 

 ①派遣労働者の雇用に対する責任の所在が曖昧になる

 ②派遣労働者が不利益を被る可能性がある

 

違反すれば、職業安定法や労働基準法によって罰せられ、企業としての信用問題にも関わります。

 

また、派遣労働者を受け入れている全ての企業で、知らず知らずのうちに二重派遣に巻き込まれてしまうリスクがあります。

知らず知らずに二重派遣に該当する派遣労働者を受け入れている場合は、法律上罰則はありませんが、業務遂行に支障をきたすことが考えられるため、契約内容や指揮命令系統を確認するとともに、コミュニケーションを意識して未然に防ぎましょう。

一方、知らず知らず二重派遣を行わないよう、関係会社や取引先などに労働力として供給する場合には、自社で雇用する従業員に限定するか、必ず指揮命令者を自社の従業員に限定してください。


そうすることで、「二重派遣を行ってしまう」ことを防ぐことができます。

なお、G&Gでは、派遣労働者を守るために制定された労働者派遣法を理解するとともに、各種法令を遵守し、トラブルなく安全に人材派遣を行っております。

 

お見積の作成やご相談についても無料で承っております。

 

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