知らず知らずのうちに期間制限超過!?派遣期間の3年ルールについて解説!

知らず知らずのうちに期間制限超過!?派遣期間の3年ルールについて解説!

今回は、違法派遣シリーズ第2弾として、【 派遣期間の3年ルール 】について、押さえておきたい基本知識や例外ケース、更新方法などを詳しく解説したいと思います。

 

派遣の3年ルールとは、2015年9月に行われた労働者派遣法の改正により設けられた派遣可能期間の制限を指し、派遣労働者を原則3年を超えて受け入れできないというルールです。

 

しかし、派遣の期間制限といっても、「事業所単位」と「個人単位」に分けられるほか、例外があるなど、非常に複雑な規制となっています。

 

そこで本記事では、派遣の期間制限とは何か、派遣先企業としては何をすればよいのかなどについて説明します。

 

知らず知らずのうちに違反にならないようにするためにも、本記事で紹介する内容をぜひ参考にしてみてください。

 

▶関連記事|知らず知らずのうちに派遣法に違反!?実はそれって違法派遣「7選」

 

派遣の期間制限(3年ルール)とは

派遣の期間制限(3年ルール)とは、労働者派遣法においての「有期雇用の派遣労働者が、同一の事業所・同一の部署で就業できる期間を、原則として最大3年までとする」というルールのことです。


このルールでは、派遣先企業は、派遣労働者を同じ場所で3年以上受け入れることができません。

なぜなら、労働者派遣法では、「派遣就業とは、基本的に臨時的・一時的な働き方」とされており、雇用安定措置の観点のもと、非正規で雇用され続けることを防止するためです。


そのため、派遣元は、同一の組織単位(課、部署など)に継続して3年間派遣される見込みがある労働者に対し、派遣終了後の雇用を継続させる措置(雇用安定措置)を講じる義務があります。


 ① 派遣先への直接雇用の依頼

 ② 新たな派遣先の提供(合理的なものに限る)

 ③ 派遣元での(派遣労働者以外としての)無期雇用

 ④ その他安定した雇用の継続を図るための措置

  ※雇用を維持したままの教育訓練、紹介予定派遣等、省令で定めるもの


一方、派遣先に対しても、該当する派遣労働者を直接雇用するよう努力義務が課せられます。(雇入れ努力義務)
 

なお、以前は「専門26業務」には期間制限がありませんでしたが、2015年9月に改正された労働者派遣法により3年ルールがすべての業務に適用されるようになりました。

(参考:派遣受入期間の制限について|厚生労働省

 

派遣の期間制限には「事業所単位」と「個人単位」の2つがある

派遣の期間制限(3年ルール)には、派遣先の 「事業所単位」 の期間制限と、派遣労働者の 「個人単位」 の期間制限の2つがあります。(参考:厚生労働省|派遣先の皆様へ

 

  派遣先の「事業所単位」の期間制限

  派遣労働者の「個人単位」の期間制限

 

それぞれ詳しく説明します。

 

< 派遣先の「事業所単位」の期間制限>

「事業所単位」の期間制限とは、同一の事業所において派遣労働者を受け入れできる期間は最大3年までという制限のことです。

 

ここでいう「事業所」とは、雇用保険の適用事業所と同じであり、工場や支店、店舗など場所的に独立している個々の場所・施設です。

 

派遣の期間制限を定めた法令の施行日以後、初めて派遣労働者を受け入れた日が、3年の派遣可能期間の起算日となります。

 

例えば、2023年12月1日から初めて派遣労働者を受け入れる場合、企業が派遣労働者を受け入れられるのは原則として2026年11月30日までです。

 

そのため、クーリング期間を空けた場合を除き、それ以降3年までの間に派遣労働者が交替したり、他の派遣会社と労働者派遣契約に基づく労働者派遣を始めた場合でも、派遣可能期間の起算日は変わりません。
(クーリング期間:期間制限の起算日がリセットされる期間のこと。派遣労働者を受け入れていない期間が3か月を超える場合に適用される。)

 

ただし、期間制限日を迎える1ヶ月前の日までに、派遣先の事業所の過半数労働組合(労働組合がない場合は、派遣先の事業所の労働者を代表する人)からの意見聴取を行うことで、派遣可能期間の制限をさらに3年間延長することができます。
 

なお、延長の回数に制限はなく、その都度、意見聴取の手続きをとることで何度でも延長することが可能です。

< 派遣労働者の「個人単位」の期間制限 >

「個人単位」の期間制限とは、派遣労働者は同一の組織単位(課、部署など)で3年を超えて働くことができないという制限です。

 

同一の組織単位とは、同じ企業という意味ではなく、総務課や人事課などの各課や部署のグループを指します。

 

個人単位の期間制限は、労働者派遣法によって定められているため、延長はできません。

 

また、事業所単位の期間制限を延長した場合でも、同一の組織単位で、3年を超えて同一の派遣労働者を受け入れることはできません。

 

なお、3年という期間制限は、仮に派遣元が変更された場合でも通算されるため、派遣先企業が個人単位の3年を管理する必要があります。

 

ただし、期間制限日を迎える前に異なる組織単位へ異動した場合は、3年を過ぎても同一の派遣労働者を受け入れることができます。(キャリアアップ措置の観点)

例えば、総務課で2年働いたあと人事課に異動すれば個人単位の3年ルールはリセットされ、人事課に異動した日から新たにカウントし、最大3年間の勤務が可能になります。


とはいえ、総務課で2年、人事課で3年となると合計で5年間派遣労働者を受け入れることになるので、派遣先は、事業所単位の派遣期間制限の延長を行う必要があります。

その理由を解説します。

 

事業所単位と個人単位の関係

事業所単位の期間と個人単位の期間はそれぞれが独立していますが、事業所単位の期間制限の方が優先されます。
 

そのため、「派遣労働者は個人単位の派遣期間制限が残っていたとしても、事業所単位の期間制限を超えて働くことはできない」というのが、先ほどの事業所単位の延長を行う必要がある理由となるわけです。

 

例えば、2023年12月1日から受入開始したAさんが2025年11月30日で受入終了になったとします。


その翌日2025年12月1日からBさんを受入開始した場合、Bさんの個人単位の期間制限は2028年11月30日までですが、事業所単位の期間制限は、Aさんを受入開始した2023年12月1日から3年となるので、変わらず2026年11月30日のままになります。

したがって、Bさんについては「1年間」しか受け入れることができないことになります。

 

そこで、事業所単位の延長を行うことにより、Bさんを残り2年間(2028年11月30日まで)受け入れることができるようになります。

 

抵触日とは?

これまで、3年ルールについて、事業所単位と個人単位の期間制限が存在することを解説いたしました。

この3年ルールの期間が過ぎた翌日のことを【抵触日】といいます。

 

例えば、2023年12月1日からはじめて派遣労働者を受け入れた場合、期間制限は2026年11月30日までですが、期間が過ぎた翌日の「2026年12月1日」が抵触日にあたります。

 

この抵触日は、派遣先企業から派遣会社に対しあらかじめ通知することが義務となっており、派遣契約が締結される度に通知しなければなりません。
(参考:厚生労働省|派遣社員を受け入れるときの主なポイント

 

【例外】3年ルールにあてはまらないケース

3年ルールには例外があり、以下の5つの条件に当てはまる場合は3年ルールは適用されず、同じ派遣先の同一の事業所・同一の部署で3年経過後も受け入れ続けることができます。

(参考:厚生労働省|平成27年労働者派遣法改正法の概要

 

 1. 派遣元で無期雇用契約を結んでいる派遣労働者

 2. 60歳以上の派遣労働者

 3. 有期プロジェクトに従事する派遣労働者

 4. 日数が限定されている業務に従事する派遣労働者

 5. 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の代替として従事する派遣労働者

 

それぞれ詳しく説明します。

 

1. 派遣元で無期雇用契約を結んでいる派遣労働者

派遣元と無期雇用契約(雇用期間に定めのない労働契約)を結んでいる派遣労働者の場合、3年ルールは適用されません。

 

無期雇用契約をしている労働者は、派遣元に常時雇用されている状態であり、3年ルールで対象となる「有期雇用の派遣労働者」に該当しないためです。

 

2. 60歳以上の派遣労働者

就業開始日または期間制限日(抵触日の前日)時点で、60歳以上の派遣労働者の場合は、キャリアアップよりも「安定して雇用されることが重視」されるため、事業所単位と個人単位の両方の3年ルールが適用対象外となります。

 

3. 有期プロジェクトに従事する派遣労働者

 終了日が明確に決まっている有期プロジェクト業務に派遣労働者を派遣する場合、3年ルールは適用されません。

 

有期プロジェクト業務とは、どのようなプロジェクトでも認められているというわけではなく、「事業の開始、転換、拡大、縮小、廃止のための業務」が対象で、一定の期間内に完了するものを指します。

 

例えば、有期プロジェクトが5年にわたる場合は5年、2年の場合は2年など、その期間で派遣労働者を受け入れられるというものです。

 

4. 日数が限定されている業務に従事する派遣労働者

 1ヶ月の勤務日数が通常の労働者の半分以下で、かつ10日以下である業務に派遣労働者を派遣する場合、3年ルールは適用されません。

 

5. 産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の代替として従事する派遣労働者

派遣先企業で、産前産後休業、育児休業、介護休業を取得している社員の代わりに派遣労働者を受け入れる場合、3年ルールは適用されません。

 

 

こんなときは違法派遣となってしまう

「知らず知らずのうちに、抵触日が過ぎていた・・・」というケースです。


派遣労働者の受入可能期間である3年を過ぎた翌日のことを「抵触日」と言い、事業所単位の期間制限を過ぎても、派遣先企業が延長の手続きをせずに派遣労働者を就業させていた場合、労働者派遣法違反の対象になります。

前述したとおり、事業所単位の抵触日の通知義務は派遣先企業にありますが、「通知しているから派遣会社に任せておけば大丈夫」と思ってしまうと、派遣会社からの確認不足により失念してしまう可能性も否定できません。

次に、個人単位の抵触日については、法令上、派遣会社から派遣先企業への通達義務などがありません。
 

ゆえに、派遣先企業にて派遣先管理台帳により管理・把握を行う必要があります。

 

こちらについても、事業所単位の時と同様で、派遣会社からの確認不足などにより失念してしまう可能性があります。

 

この3年ルールに違反した場合は、派遣先企業に対して行政指導が行われ、指導に従わない場合には、企業名が公表される可能性があります。

 

そのため、事業所単位と個人単位とで異なる抵触日をしっかりと把握し、派遣労働者を受け入れている派遣先企業としてこの「3年ルール」の内容をしっかりと理解しておくことが重要です。

 

なお、罰則ではありませんが、派遣先により違法派遣が行われた時点で、派遣先等が派遣労働者に対して、その派遣労働者の雇用主(派遣元)との労働条件と同じ内容の労働契約を申し込んだとみなす「労働契約申込みみなし制度」が適用される可能性があります。

(参考:厚生労働省|労働契約申込みみなし制度の概要

 

抵触日の確認方法と延長方法を理解しよう

それでは、事業所単位と個人単位とで異なる抵触日を、派遣先企業としてどのような方法で確認すればいいのでしょうか。

 

継続して派遣労働者を受け入れる方法と合わせて解説します。

 

「事業所単位」抵触日の確認方法と延長方法

派遣先は労働者派遣契約の締結前に、派遣元に対して事業所抵触日を通知する義務があり、そもそも派遣先から事業所抵触日の通知を受けなければ派遣契約を締結することができないことになっています。

 

その際の通知方法は、「書面を交付する」か、「電子メールで書面データを添付し送信する」、または「電子メール本文に抵触日を記載して送信する」のどれかとなりますが、どの手段を用いたとしても必ず記録に残ることになるので、作成した書面(抵触日通知書)の保管・管理を適切に行うことで把握することができます。
 

また、3年ルールは「事業所単位で原則3年」という規定のため、事業所単位の定義を認識しておらず、各課や部署が独自で抵触日を設定してしまうと、抵触日を超えて派遣労働者を受け入れ続けてしまう恐れがあります。

 

そのため、定義を理解し、事業所全体で認識を合わせ、抵触日を超えることがないように管理することが重要です。

 

そして、同一の事業所において3年ルールを延長したい場合、期間制限日を迎える1ヶ月前の日までに当該事業所の過半数労働組合(労働組合がない場合は、派遣先の事業所の労働者を代表する人)からの意見聴取を行うことで延長することができます。

(参考:厚生労働省|派遣受入期間の延長

 

延長の回数に制限はなく、その都度意見聴取の手続きをとることで、派遣会社から派遣労働者を派遣し続けてもらうことが可能です。

 

「個人単位」抵触日の確認方法と延長方法

個人単位の抵触日については、派遣会社で把握できているので、派遣会社の担当者に聞けば個人単位の抵触日を確認することができます。

 

なお、個人単位の期間制限は、労働者派遣法によって定められているため延長はできません。

 

しかし、個人単位の期間制限である3年を超えて継続したい場合、下記のようなパターンがあります。

 

 

①派遣先企業が派遣労働者を直接雇用する

派遣労働者から自社の直接雇用の社員に雇用形態を変更することで、無期限の雇用が可能になり、同じ人材に引き続き同じ業務を行ってもらうことが可能です。

 

また、以下の1から3に該当する場合、派遣元から受け入れている派遣労働者を、派遣先は遅滞なく雇用するよう努めなければならないという「雇用の努力義務」が定められています。(法第40条)

 

 (1)有期雇用の派遣労働者が同一の業務について、1年以上継続して従事していたこと

 (2)派遣先に雇用されて同一の業務に従事することを希望する旨を派遣先に申し出たこと

 (3)派遣実施期間が経過した日から起算して7日以内に派遣元事業主との雇用関係が終了したこと

 

この努力義務は、誰か労働者を雇用しようとする場合の優先雇用の努力義務であり、同一の業務について派遣期間を継続して従事した派遣労働者に対してのみ生じるものです。

 

②派遣会社が派遣労働者を無期雇用する

派遣労働者が派遣会社と無期雇用契約を結ぶことで、個人単位の期間制限を受けずに継続して派遣労働者を受け入れることができます。

 

 

③派遣労働者が別の課や部署へ異動する

同じ派遣先であっても、課や部署などの組織単位が変われば、同じ派遣労働者を受け入れることが可能です。

 

ただし、この場合、事業所が3年ルールを超えて派遣労働者を受け入れることになるので、事業所単位の期間制限を延長する手続き(意見聴収)が必要です。

 

まとめ:期間制限超過は違法!正しく理解し、適切な派遣運用を!

改めて本記事をまとめます。

 

3年ルールとは、雇用安定措置の観点のもと、非正規で雇用され続けることを防止するため、「派遣労働者が同一の事業所(事業所単位)または同一の組織(個人単位)で働き続けることができる期間は最大3年まで」という決まりです。


その期間制限を過ぎた翌日の事を【抵触日】といいます。

 

事業所単位の期間制限の3年が過ぎた場合は、期間制限日を迎える1ヶ月前の日までに当該事業所の過半数労働組合(労働組合がない場合は、派遣先の事業所の労働者を代表する人)からの意見聴取を行うことで期間制限をさらに3年延長できます。

 

個人単位の期間制限の3年が過ぎた場合の選択肢としては、「自社で直接雇用する」「派遣元が無期雇用する」「別の課や部署へ異動する」の3つがあげられます。

 

いずれを選択肢する場合も、派遣労働者、派遣元を交えてよく話し合い、双方が納得できる契約を結ぶことが大切です。

 

事業所単位と個人単位の2つがあり、複雑に感じられますが派遣労働者を受け入れる派遣先企業の担当者としては、3年ルールの内容を理解した上で受け入れることでトラブルを回避することに繋がります。

 

また、派遣元である派遣会社の担当者としっかりと連携し、不明な点などはその都度確認することで、知らず知らずのうちに抵触日を過ぎ、法律違反になってしまうことを防ぐことができます。

 

派遣においての3年ルールについて改めて理解し、派遣先企業として適切な対応で派遣運用を行いましょう。