「人材派遣できない業務」とは?派遣適用除外業務を解説!

「人材派遣できない業務」とは?派遣適用除外業務を解説!

人材派遣は、人材を迅速に確保できるという点や幅広い業種、多種多様な知識と経験がある人材を確保することに効果的で、急な人手不足や特定業務の人手不足に対する解決手段として広く活用されています。

 

しかし、全ての業務で人材派遣を活用できるわけではありません。

 

人材派遣には、派遣が禁止されている業務(派遣労働者に任せてはいけない業務)が、労働者派遣法等によって定められています。

 

これを派遣適用除外業務といい、厚生労働省によりその内容がまとめられています。

 

そこで今回は、違法派遣シリーズ第3弾として【 派遣適用除外業務 】について、その業務内容や禁止とされる理由、例外ケースなどを詳しく解説したいと思います。

 

知らず知らずのうちに派遣労働者に適用除外業務を任せてしまうことがないよう、ぜひこの機会に改めて確認してみてください。

 

 ▶関連記事|知らず知らずのうちに派遣法に違反!?実はそれって違法派遣「7選」

派遣における「適用除外業務」とは?

労働者派遣法や施行令などによって、人材派遣が禁止されている業務があります。

(参考:厚生労働省|労働者派遣事業を行うことができない業務は

 

このような派遣で禁止されている業務を、「適用除外業務」と呼びます。

 

適用除外業務が定められている理由は、主に以下の通りです。

 

 ・別の法律でその業務に関して定められている

 ・業務内容の危険性が高い

 ・業務内容に専門的な知識や技術が必要である

 

これらの理由により、一定の業務については派遣制度が禁止されています。

 

人材派遣が禁止されている5つの業務

適用除外業務とされているのは以下の5つの業務です。

 

 1.港湾運送業務

 2.建設業務

 3.警備業務

 4.病院・診療所などにおける医療関連業務

 5.弁護士・社会保険労務士などの「士」業務

 

それぞれ具体的に解説します。

 

(参考:一般社団法人 日本人材派遣協会

 

1.港湾運送業務

◆港湾運送業務とは

6大港(東京、横浜、名古屋、大阪、神戸及び関門)と指定港湾における船内荷役・はしけ運送・沿岸荷役やいかだ運送、船積貨物の鑑定・検量等の業務です。


 

◆適用除外業務に該当する具体例

・船舶への貨物の積み込みや荷降ろし、荷造りや荷ほどき

・船舶に積まれた貨物の移動や固定、貨物の梱包や包装の修理

・船舶や湾岸で貨物の積み降ろし場所の清掃

・船舶から降ろした貨物の港湾内倉庫への輸送

・港湾倉庫内での貨物の荷ほどきや仕分け

・運送車両(トラックや鉄道など)に湾岸倉庫などから貨物の積み込みや荷降ろし

※機械を使用した業務と人力による業務いずれも禁止されています


 

◆禁止理由

港湾業務は、閑散期・繁忙期で仕事量に大きな差があり、雇用が不安定になるなどの特殊性を考慮し、労働者派遣法に基づく労働者派遣事業とは別に港湾労働法において、特別な労働力の需給調整を行う「港湾労働者派遣制度」が導入されています。

 

そのため、港湾労働者の雇用の安定化を図るために港湾労働者派遣制度を活用することを前提とし、労働者派遣事業においては港湾運送業務を適用除外業務としています。


 

◆例外

港湾荷役の現場で作業する業務は適用除外業務となりますが、それ以外の事務業務や荷役に利用する機械の保守メンテナンス業務、トラックなどの運送車両の運転などの業務は、労働者派遣が可能です。

 

2.建設業務

◆建設業務とは

建築工事現場における、土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊または解体の作業や、これらの準備の作業に係る業務です。


 

◆適用除外業務に該当する具体例

・建設、工事現場での資材の運搬や組立て

・建築・土木工事でのコンクリートの合成、建材の加工

・壁や天井、床の塗装や補修

・建築、土木現場内の配線や配管工事、機器の設置

・建築、土木工事後の現場の整理清掃

・大型仮設テントや大型仮設舞台、仮設住宅(プレハブ住宅等)の組み立て設置

・建造物や家屋の解体


 

◆禁止理由

建設業務は、下請けが何重にも発生し雇用関係が不明確になりやすいことから、「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」の中で、労働者を雇用する者と指揮命令する者が一致する請負という形態になるよう措置が講じられています。

 

また、受注生産や総合生産などその特殊性にかんがみ、建設労働者の雇用の安定を図るため、特別な労働力の需給調整を行う「建設業務労働者就業機会確保事業制度」が導入されています。

 

そのため、建設労働者の雇用の安定化を図るために建設業務労働者就業機会確保事業制度を活用することを前提とし、労働者派遣事業においては建設業務を適用除外業務としています。


 

◆例外

建設業務に関わる業務であっても、事務業務、CADオペレーター、施工管理などの「工事現場で行わない業務」は、労働者派遣が可能です。

 

3.警備業務

◆警備業務とは

会社、住宅、興行場、駐車場、遊園地などにおける施設にて、事故やトラブルを未然に防止したり、運搬中の現金や貴重品などの盗難を警戒し、監視する業務です。


 

◆適用除外業務に該当する具体例

・イベント会場や店舗の入口での手荷物検査

・盗難、事故発生を防止・警戒するために、不審者への注意喚起や質問

・盗難、事故発生を防止・警戒するために、建造物内などの巡回

・混雑する場所での人や車両などの整理・誘導

・犯罪者の追跡

・貴重品や金品などを運搬する際の監視

・防犯通報に対する待機

・建物内が無人の時間帯に当直や夜間窓口での常駐

 

また、警備以外の業務(販売業務や受付業務など)で派遣されている派遣労働者でも、業務内容によっては、警備業務に該当するケースがあるので注意が必要です。

 

例えば、本来レジ業務に従事する者が、店内や店舗周辺を徘徊している不審者に声をかけることや、混雑する場所で人の整理・車両の誘導などを「繰り返し」行うことは警備業務に該当する可能性があります。


 

◆禁止理由

警備業は、警備業法によって請負形態で業務を行うことが求められているため、労働者派遣事業が禁止であり適用除外業務とされています。

 

また、警備は命に関わる事態が発生するリスクがあり、労働者の安全性の面でも問題がありますので、適正な業務遂行のためも、派遣労働者が行うことが禁止されています。


 

◆例外

警備業務において、例外はありません。

 

4.病院・診療所などにおける医療関連業務

◆病院・診療所などにおける医療関連業務とは

医師、歯科医師、薬剤師の調剤、保健婦、助産婦、看護師・准看護師など医療行為に携わる業務です。


 

◆適用除外業務に該当する具体例

・医師          ・臨床検査技師

・歯科医師        ・理学療法士

・薬剤師         ・作業療法士

・看護師         ・視能訓練士

・准看護師        ・臨床工学技士

・保健師         ・義肢装具士

・助産師         ・救急救命士

・栄養士         ・言語聴覚士

・診療放射線技師     

・歯科衛生士       

・歯科技工士


 

◆禁止理由

適切な医療行為を行うためには、医療に関する専門知識や経験、資格が必要であり、専門性を持った労働者がチームを形成し、連携して医療行為を行う必要があります。

 

しかし、人材派遣では派遣会社が労働者の人選や変更を行うため、十分な意思疎通が図れない恐れがあり「チーム医療」に支障を生じかねないため、医療関連業務は適用除外業務とされています。


 

◆例外

以下のいずれかに該当する場合は、医療関連業務を派遣労働者が行うことが認められています。

 

・紹介予定派遣を活用する場合

・産前産後休業や育児休業、介護休業を取得した人材の代替業務

・へき地や離島、都道府県が必要と認めた病院や診療所などでの業務

 

また、派遣が禁止されている資格者が行う業務であっても、社会福祉施設(障害者支援施設、生活保護法に基づく救護施設・更正施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホームなど)に設置された診療所については、適用除外業務に該当しません。

 

5.弁護士・社会保険労務士などの「士」業務

◆弁護士・社会保険労務士などの「士」業務とは

弁護士や司法書士、土地家屋調査士、管理建築士、会計士、社会保険労務士などの業務です。


 

◆適用除外業務に該当する具体例

・弁護士

・外国法事務弁護士

・司法書士

・土地家屋調査士

・公認会計士

・税理士

・弁理士

・社会保険労務士

・行政書士

・管理建築士


 

◆禁止理由

派遣労働者は派遣先の指揮命令の下で従事するものでありますが、「士」業務は有資格者個人が、それぞれ業務委託を受けておこなうものであるため、「誰かの指揮命令を受ける」【派遣】という形態にそぐわないことから人材派遣の対象とはならず、適用除外業務とされています。

 

   

◆例外

例えば行政書士の場合、「行政書士または行政書士法人が派遣元となり、他の行政書士または行政書士法人を派遣先とする」場合は、人材派遣が可能です。

 

このほかに、公認会計士・税理士・弁理士・社会保険労務士の業務についても同様で、特定の条件を満たす場合、人材派遣が可能になります。

 

詳しくは下記参考をご覧ください。

(参考:厚生労働省|第2 適用除外業務等

 

派遣適用除外業務をさせてしまった場合の罰則

派遣先企業が派遣労働者を適用除外業務に従事させてしまった場合、派遣先企業に対して、「違法行為を是正するために必要な措置をとるべきこと」について勧告され、この勧告に従わないと企業名などが公表される恐れがあります。

(参考:厚生労働省|派遣元事業主又は派遣先が法律違反を行った場合

 

さらに、適用除外業務という違法派遣と知りながら派遣労働者を受け入れた場合、派遣元と同じ条件で派遣労働者に労働契約の申し込みをしたものとみなされ、派遣労働者がそれを承諾した時点で直接雇用することになります。(労働契約申込みみなし制度)

 

まとめ:派遣適用除外業務を理解し、適切な派遣受け入れを!

改めて本記事をまとめます。

 

人材派遣は全ての業種で受け入れできるわけではなく、労働者派遣法や施行令などにより人材派遣が禁止されている「適用除外業務」があります。

 

適用除外業務とされているのは以下の5つの業務です。

 

 1.港湾運送業務

 2.建設業務

 3.警備業務

 4.病院・診療所などにおける医療関連業務

 5.弁護士・社会保険労務士などの「士」業務

 

ただし派遣適用除外業務に該当する業務であっても、働き方や一部の業務においては派遣が認められる例外がある点も注意したいところです。

 

また、上記5つの適用除外業務の中でも特に警備業務の適用除外業務については、販売業務や受付業務などに派遣されている派遣労働者でも、業務内容によっては知らず知らずのうちに警備業務に該当してしまうケースがあります。

 

「知らなかった」「気付かなかった」では済まされず、このような法令違反となってしまわないためにも、日頃から派遣労働者の業務内容や契約内容について理解を深めておくことが大切です。

 

そして、「派遣労働者の受け入れ」について正しい情報を理解し適切に活用していくには、派遣元である派遣会社との信頼関係が必要不可欠です。

 

安心して人材派遣のメリットを得るためにも、コンプライアンス遵守を徹底している派遣会社を選ぶことで、適切なサポートを受けられます。

 

なお、G&Gでは、派遣労働者を守るために制定された労働者派遣法を理解するとともに、各種法令を遵守し、トラブルなく安全な人材派遣を行っております。

 

 お見積の作成やご相談についても無料で承っております。

 

派遣労働者をお探しの採用担当者の方は、ぜひ一度G&Gにお気軽にご相談ください。


 

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